「駐車場経営は税金対策にならない」は本当!?固定資産税と都市計画税の仕組み
家や土地を買うとお付き合いが始まるのが固定資産税。
もちろん、駐車場経営でも固定資産税はかかってきます。他にも駐車場経営でかかる税金はいくつかあり、駐車場経営を始めたい!という方にとって税金は気になる点ですよね?
すでに土地を所有している人のなかには、何のことかわからないけど毎年納税書が届くからとりあえず払っていた、なんていう方もいるかもしれません。
今回は、駐車場経営の税金において誤解されることの多い「固定資産税」と「都市計画税」について、その仕組みと計算方法をご紹介します。
税金に関しては、知らないと損をしてしまうことも!?
今すぐ駐車場経営を始めるわけじゃないから…というあなたも、これを読んで税金の知識を身につけておけば、損をしない駐車場経営が今すぐ始められます!
1.駐車場経営でかかる税金一覧
駐車場経営でかかる税金は大きく分けて4種類。
税金 | 税率 | |
---|---|---|
「土地・建物」にかかる税金 | 固定資産税 | 1.4% |
都市計画税 | 0.3% | |
「土地・建物以外」にかかる税金 | 償却資産税 | 1.4% |
「売上」にかかる税金 | 消費税 | 10% |
「所得」にかかる税金 | 所得税+住民税 | 5~55% |
個人事業税 | 5% |
それでは、1つ1つ確認していきましょう。
- 固定資産税・都市計画税
- 土地・建物にかかる税金のことです。
土地の所有者に課税される地方税で、土地の種類によって減税措置があります。詳しくは次の章で説明します。 - 償却資産税
- 土地・建物以外にかかる税金のことです。
駐車場経営の場合だと、駐車場機器やアスファルト舗装、フェンス等駐車場の設備にかかってきます。運営会社に全て委託する形(一括借り上げプラン)の場合は、オーナー様の負担はありません。 - 消費税
- これはお馴染みの税金かと思いますが、消費税は売上(必要経費を差し引く前の売上)にかかる税金のことです。駐車場経営で得た売上金に対してその10%(※2019年10月現在)が課税対象となりますが、条件を満たせば(前々年の課税売上高が1,000万円以下の場合など)納税義務が免除となります。
- 所得税・個人事業税
- こちらもお馴染みですね。所得に対してかかる税金のことです。所得とは「売上-必要経費-各種控除=所得」となります。
個人事業税は、駐車場の収容台数が10台以上の場合にかかる税金です。副業(駐車場経営とは別に給与所得がある方)の場合、収入を合算して確定申告をする必要があります。
駐車場経営を検討されている方の多くは、運営会社に委託し経営する方法を選択します。その場合、上記に挙げた税金全てがかかるわけではありません。
様々な税金がありますが、今回は、土地を所有していれば必ずかかる固定資産税、都市計画税について掘り下げてご説明します。 固定資産税に関しては誤解も多いので、その仕組みと計算方法を次の章で詳しく解説していきます。
2.固定資産税と都市計画税
2-1.固定資産税とは?
固定資産税とは、地方税の一種で、土地と建物それぞれにかかる税金のことです。
1月1日現在の土地所有者に対して課税されるもので、例えば年の途中で土地所有者が変更になった場合でも、1月1日時点で所有者だった方にその年度の納税額を納める義務があります。
2-2.都市計画税とは?
都市計画税とは、固定資産税と同じく土地・建物にかかる税金です。
都市計画事業・土地区間整理事業の費用に充てることを目的としています。具体的には、道路建設や上下水道の整備等に使われます。
都市計画税が課税される対象者は、「市街化区域内」に土地・建物を所有している方が対象となります。
ご自身が所有している土地・建物が市街化区域内かどうかは、自治体に問い合わせると教えてくれます。自治体によってはHPで公開しているところもあります。
2-3.評価額とは?
評価額とは、固定資産税を計算する際に使用する固定資産税評価額のことを言います。
「固定資産評価基準」に基づいて各市町村が土地や建物を1つ1つ確認して評価額を決めています。
土地・建物を購入した時の金額ではありませんので、注意が必要です。
土地の場合、概ね公示価格の70%が固定資産税評価額の目安と言われていますが、立地や形状によって評価額は変わってきます。
建物の場合は、新築時で請負工事価格の50~60%と言われています。築年数が経つほど評価額は減少するため、建物の固定資産税は年々減少していきます。
すでに土地を所有している方は、毎年4月~5月に送られてくる「固定資産税・都市計画税納税通知書」の「課税明細書」を確認すれば、固定資産税評価額は分かります。
3.家が建っていれば土地の税金は安くなる
例えば、180㎡の土地(固定資産税評価額2,000万円)に家屋(固定資産税評価額500万円)を所有しているとします。
これを先ほどの固定資産税と都市計画税の計算式に当てはめ計算すると
2,000万円×1.4%+2,000万円×0.3%=34万円【建物にかかる税金】
500万円×1.4%+500万円×0.3%=8.5万円合計=42.5万円
「高い!」と思われた方、安心してください。固定資産税には優遇措置があります。
住宅用地として認められる場合に「住宅用地の特例」が適用されます。
- 住宅用地の特例措置
- 住宅用地については、その税負担を軽減する目的から、課税標準の特例措置が設けられています。住宅用地の特例措置を適用した額(本則課税標準額)は、住宅用地の区分、固定資産税及び都市計画税に応じて下表のとおり算出されます。
区分 固定資産税 都市計画税 小規模住宅用地(200㎡以下) 評価額が1/6に減額 評価額が1/3に減額 一般住宅用地(200㎡を超える部分) 評価額が1/3に減額 評価額が2/3に減額 引用元:東京都主税局
先ほどの例に「住宅用地の特例」を当てはめて計算すると
2,000万円×1/6×1.4%+2,000万円×1/3×0.3%=約6.66万円【建物にかかる税金】
建物の税額はそのままなので、8.5万円合計=約15.16万円
つまり、家が建っていれば固定資産税と都市計画税は安くなるということです。
アパートやマンションを建設する賃貸住宅経営の場合は、住宅用地の特例措置が適用されるため固定資産税・都市計画税は減税されます。
残念ながら駐車場経営の場合は、上に建物がないので「更地」扱いとなります。その場合、固定資産税の優遇措置は適用されません。
これが「駐車場経営は税金対策にならない」と言われている理由です。
4.駐車場経営は税金対策にならない!?
『空家になっている土地に固定資産税を払うのはもったいないから、取り壊して駐車場経営をしようと思う』
『建物を取り壊したら固定資産税が6倍になっちゃうからやめといた方がいいよ』
このような会話を耳にすることがあります。
果たして本当にそうなのでしょうか?
先ほどの土地(180㎡で固定資産税評価額2,000万円)を例に、計算してみましょう!
2,000万円×1.4%+2,000万円×0.3%=34万円【建物にかかる税金】
なし合計=34万円
建物がある場合には約15万円ほどだったのに対して、更地にしたら34万円。19万円ほど高くなる計算です。
こうした税金の高さが空家問題が増えている原因の1つでもあると言われています。
少し話がそれましたが、中には更地にすることで固定資産税と都市計画税が安くなるケースもあります。
固定資産税と都市計画税自体は土地、建物両方にかかる税金なので、建物がなくなれば「建物」にかかっていた税金はゼロになります。
固定資産税のうち建物にかかる税金の割合が多い場合には、建物を取り壊し更地にすることで固定資産税が安くなるというケースもあります。
少し分かりにくいかと思いますので、例を出して計算してみましょう!
・土地(180㎡)—固定資産税評価額800万円
・建物(木造築30年)—固定資産税評価額250万円
800万円×1/6×1.4%+800万円×1/3×0.3%=約2.65万円【建物にかかる税金】
250万円×1.4%+250万円×0.3%=4.25万円
合計=6.9万円
800万円×1.4%+800万円×0.3%=13.6万円
・土地(180㎡)—固定資産税評価額1,200万円
・建物(鉄筋コンクリート築10年)—固定資産税評価額1,000万円
1,200万円×1/6×1.4%+1,200万円×1/3×0.3%=4万円【建物にかかる税金】
1,000万円×1.4%+1,000万円×0.3%=17万円
合計=21万円
1,200万円×1.4%+1,200万円×0.3%=20.4万円
土地Aと土地Bを比較すると、Bの場合は更地にした方が固定資産税と都市計画税は安くなる結果となりました。
必ずしも更地にして駐車場にしたら固定資産税が上がるというわけではないということです。
とは言え、更地にすることで固定資産税・都市計画税が上がってしまう方が多くいることも確かです。
ではなぜ、税制上のメリットが少ないのに駐車場経営は人気なのでしょうか?
5.それでも駐車場経営が人気の理由
ここまでのおさらいになりますが、駐車場経営の場合その土地は「更地」扱いとなり、住宅用地の特例が適用されません。
その結果、建物を取り壊して駐車場を始めようとすると固定資産税と都市計画税が上がってしまう可能性があります。
それでも駐車場経営が土地活用として人気の投資方法となっているのはなぜでしょうか?
答えは、税制面以外の部分で多くのメリットがあるからです。
5-1.駐車場経営はメリットが多い
主なメリットは
- 初期費用がかからない(※一括借り上げの場合)
- 低リスク
- 狭小地・変形地でもOK!
- 手間がかからない
- 土地の転用がしやすい
駐車場経営は運営会社に委託することで、初期費用無料で土地の整地から機器設備の設置、オープン後の運営管理まで全て行なってくれます。
デメリットはと言うと
- 税制上のメリットが少ない
- 賃貸住宅経営と比べると収入額が少ない
メリットが5つに対し、デメリットは2つだけ。
よく比較される賃貸住宅経営は、固定資産税・都市計画税の減税が可能ですが、マンションやアパート入居者とのトラブルや空室リスク等、メリットに対し、デメリットの数も多いです。
どうでしょう?賃貸住宅経営に比べ駐車場経営が人気の理由、お分かりいただけましたか?
5-2.暫定的な土地活用に向いている
メリットのなかでも、土地の転用がしやすい点は大きなメリットと言えます。
駐車場経営は、ごく僅かな機器設備の設置のみで建物を建てる必要がありません。そのため、工事期間も短く駐車場経営を検討し始めてからオープンまでを短期間で行なえます。閉鎖する場合も同様です。
駐車場経営で資金を貯めてからアパートやマンションの賃貸住宅経営を始めたり、やっぱり駐車場経営は向いてないから辞めよう、という場合でもすぐに辞めることができるので、暫定的な土地活用として非常に優れています。
もちろん、立地条件によってはしっかり収益を得られるので長期で運用するメリットも沢山あります。
【おまけ】更地はアスファルト舗装した方がお得!?
実は、相続税に関しては節税が可能になるケースがあります。
相続税には「小規模宅地等の特例」というものがあります。
個人が、相続又は遺贈により取得した財産のうち、その相続の開始の直前において被相続人等の事業の用に供されていた宅地等又は被相続人等の居住の用に供されていた宅地等のうち、一定の選択をしたもので限度面積までの部分(以下「小規模宅地等」といいます。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、一定の割合を減額します。この特例を小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例といいます。
引用元:国税庁HP
相続した土地が一定条件を満たしていると「小規模宅地等の特例」が適用され相続税が大幅に減額されるというものです。
この制度「小規模宅地」という言葉から土地に建物が建ってないと評価減を受けられないと思いがちですが、アスファルトの駐車場であれば面積の200㎡まで50%の評価減を受けられるケースもあります。評価減を受ければ、資産の評価額が安くなり、その分税金も安くなります。
この制度の条件はアスファルト舗装なので、駐車場の中でも砂利の駐車場では小規模宅地の特例は受けられません。
つまり、アスファルトさえ敷いてあればいいので土地をただ放っておくよりも、月極駐車場またはコインパーキングにしておけば収入も見込め、税金対策にもなる、ということです。
また、アスファルト舗装には費用がかかりますが、駐車場運営会社と一括借り上げで契約すれば初期費用無料でアスファルト舗装工事を行なってくれます。
土地は更地にしておくよりも活用を考えた方が相続税対策に有効であると言えます。
相続税に関してご相談がありましたら、税理士など税務の専門家に一度ご相談されることをおすすめします。
6.まとめ
固定資産税・都市計画税は土地・建物に課税される税金。
駐車場経営は土地が「更地」扱いになるため「住宅用地の特例」が適用されません。そのため残念ながら、固定資産税・都市計画税において節税効果はないということが言えます。
それでも、駐車場経営が人気の理由は、税制面以外の部分でメリットが多いから。
特に暫定的な土地活用には優れています。
税金に関しては、その人その人によって状況が違うためここに記載した内容は参考程度にして、まずは駐車場経営をした場合トータルで税額がどうなるのか、オーナー様ご自身で試算してみる、もしくは税理士など税務の専門家にご相談されることをおすすめします。
アップルパークは駐車場・駐輪場経営に関するご相談・お見積り・現地調査を無料で行なっております。
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税理士法人M.T.総研 税理士
株式会社アップルパーク取締役
資産税(相続や贈与など)に関わる業務経験20年以上。
経験に裏打ちされたアドバイスには定評がある。
今回は、駐車場経営の税金について紹介しましたが、初期費用や利回り、よくあるトラブル等、駐車場経営を成功させるためには駐車場経営全体のことを知る必要があります。
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